亡き人を思い祈る 東日本大震災10年
多くの尊い命を奪い多くの家屋や船舶を破壊していった巨大津波から10年、各地で犠牲者追悼式や物故者追悼法要が営まれた。亡くなられた大切な人を思い静かに手を合わせた。
今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から規模を縮小しての実施である。大船渡市における東日本大震災10周年犠牲者追悼式は、11日、リアスホールで関係者や来賓含めて40人程で挙行。末崎町中森にある瑞光山麟祥寺においても、物故者追悼法要が営われ、呼びかけはしなかったが来山したご遺族や檀信徒がやすらぎ地蔵に向かい手を合わせた。
10年という歳月が経ったが、いまなお震災時の恐ろしい光景が昨日のことのように蘇る。これまで感じたことがない大きな地震(ゆれ)、物凄い速さで襲来して街並みを一瞬にして破壊し掛替えのない尊い命を奪っていった津波。どうすることもできない無力さ、恐ろしさに、震えながら、ただ呆然と立ち尽くしていたことを思い出す。
この震災による末崎町の被害状況(市復興局調べ)は、死者・行方不明者64人、住家被害は全壊509戸、大規模半壊・半壊・一部半壊366戸であった。
あらためて、この震災により犠牲になられた方々のご家族やご親族の皆様に謹んで哀悼の意を表しますとともに被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
これからの私たちは、この東日本大震災の教訓を語り継いで防災・減災に努めていかなければならない。
末崎中学校の卒業式が13日に行われ、23人の生徒が巣立っていった。卒業生が5歳の時、東日本大震災が発生した。あっという間にすべてを破壊していった津波、身を寄せ合い炊出し支援等により飢えを凌いだ避難所暮らしや仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされるなど、つらい日々を送っての卒業だったろう。式では「頑張って涙を見せないようにしょう」と話し合って臨んだという。しかし、式後の学級でのお別れの会では親も子も皆、涙、涙だったと聞く。中には最愛の父を亡くされた卒業生もいたという、心中を察すると胸が痛くなる。そして、「よく頑張ったね」と声をかけたい。卒業生はやがて語り部となって、我が子にも地域にも津波の恐ろしさを伝え続け防災・減災に力を尽くしてくれることだろう。卒業生には幸多かれと祈る。