館報まっさき 第283号(平成30年6月20日発行)

居場所ハウス  開設5周年記念感謝祭

「多世代交流館・居場所ハウス」(館長鈴木軍平)は6月16日、開設5周年記念感謝祭を開催した。
 居場所ハウスの広場には、身動きできないほど、町内外から多くの人々が集い、開設5周年を祝った。遠くは、米国、東京からも関係者が駆けつけた。また、「朝市」も同時に開催されたことから大変な賑わいとなった。
 来場者は記念の「餅まき」に続き、「さすけ会」の勇款(さすけ)さんの踊りを堪能。昨年度NHK全国民謡大会東北地区1位になった、末崎町ゆかりの民謡歌手佐々木深里さんの唄う民謡に酔いしれた。

 セレモニーでは、鈴木館長は、「居場所ハウス」の開設は東日本大震災から2年後の平成25年6月であり、当時は被災された多くの人々が仮設住宅暮らしを余儀なくされており、そういう方々の心をどのようにしたら癒して上げられるか。模索の日々が続いたが、被災者に寄り添いながらやってきた。と振り返った。被災した人々も防災集団移転促進事業による高台移転や公営災害住宅に入居され、かなり本来の生活に戻った今は、高齢者が一層生き生きと暮していけるよう、色々な事業に取り組んでいる。これからも、高齢者が少しでも元気で活躍できるような事業を企画し実施していきたい。そのためには、何よりも財政基盤がしっかりしていなければならない。現在は、主に民間からの補助金を受けて運営しているので、皆様のさらなるご支援ご協力お願いしたいと話された。
 続いて、戸田公明大船渡市長、清田英巳ワシントンDC・Ibasho代表、新沼眞作末崎地区公民館長が祝辞を述べた。
末崎に「居場所」を開設した訳
ワシントンDC・Ibasyoの代表、清田英巳氏に「なぜ、日本で初めての居場所ハウスを末崎に決めたのか」と尋ねると。高齢化が進む今日、高齢者にも元気で地域社会の一員として何かしらの役割を担って生きていってほしい。居場所ハウスを作るのに、いくつか候補地を見て回り、末崎のこの場所に決めたのは、知人がいたこともあるが、何よりも「この地には、元気な高齢者がおり、かつ、行動(運営)できる人がいたからだ」ということであった。
 Ibashoの目的と理念
ワシントンDCのIbashoは、清田英巳氏(米国在住)が2008年からボランティア活動を始め、2011年1月にアメリカ合衆国内国歳入庁から非営利法人の認証を受けた団体である。高齢者が役に立たない存在とみなされ、介護を受けるだけの存在になるのではなく、何歳になっても自分にできる役割を担いながら地域に住み続け、世代を越えた関係を築いていくことが可能な社会の実現と、そのために「歳をとること」の概念を変えていくことを目的としている。
 Ibashoは、その目的を実現するため、つぎの8理念を掲げている。
①高齢者が知恵と経験を活かすこと。
 豊かな知恵や経験をもつ高齢者は、地域にとってかけがえのない財産。高齢者が頼りにされ、自信を持てるようにしょう。
②あくまでも「ふつう」を実現すること。
 誰にも強制されず、いつでも気軽に立ち寄れて、何となく好きなことができる、そんな「ふつう」の場所にしよう。
③地域の人たちがオーナーになること。
 みんなで知恵や力を出し合い、助け合って、地域の自慢の場所にしよう。
④地域の文化や伝統の魅力を発見すること。
 地域には独自の文化や伝統がある。じっくり見つめれば沢山の魅力に気づくはず。他を真似せず、地域ならではの魅力を発見していこう。
⑤様々な経歴・能力をもつ人たちが力を発揮できること。
 地域には様々な人が暮している。「できないこと」ばかりの弱者と思い込んで孤立しなくていいように、それぞれが「できること」を持ち寄って、互いに支え合おう。
⑥あらゆる世代がつながりながら学び合うこと。
 子供や若者は人生の先輩である高齢者から、高齢者は新しいことに敏感で、すぐ吸収していく子供や若者から―というように、世代を越えて学び合う場所にしよう。
⑦ずっと続いていくこと。
 居場所を続けていくには、暮らしに恵を与えてくれる自然環境を破壊しないこと。必要なお金は自分たちで賄うこと。人と人との関係を大切にすることである。さらに、継続していく中で、地域や国境を越えたつながりを築いていこう。
⑧完全を求めないこと。
 初めから完全であることを求めず、その時々の状況に対応しながら、じっくりと、ゆっくりとやっていけばいい。その道のりは地域によって違うはず。
末崎の「居場所ハウス」
「居場所ハウス」は、「Ibashoの目的と理念」に基づいて運営されており、末崎町の高齢者を中心とする地域住民一人ひとりが、自分にできる役割を持ち寄りながら、皆で作りあげる多世代の「居場所」である。また、「居場所ハウス」は、カフェの運営をベースとしており、自由に出入りし、思い思いに過ごせる場所でもある。