末崎中学校では、日本で唯一のわかめ養殖の総合学習を行っています。
教室で末崎町でのわかめ養殖発祥の歴史や養殖技術の授業を受けることから始まり、真冬の船上での種の付いた糸をロープに巻き付ける作業(種巻き)、収穫、加工と養殖作業を行います。
そして街での販売、最後に山の植林までわかめ養殖に関わることを在学中の3年間を通して学びます。
わかめ養殖技術を発祥させて末崎の住民を救った小松藤蔵さんの意思を受け継ぐ、佐々木非常勤講師(大船渡市漁協副組合長)をはじめとする南浜わかめ養殖組合の支援を受け、末崎中学校の生徒達は地元の代表的な産業、わかめ養殖へ理解を深めることができます。
真冬の海で養殖を体験して学ぶ1年生
朝日浴び 凍てつく海で 苅るわかめ
永久に輝け 産土の子ら
わかめについての授業を受けた後、種巻きの道具などの準備を夏から秋にかけて行います。
そして、気温が氷点下になることもある真冬の11月〜12月。1艘の船に5〜6人ずつ乗船して、わかめの種巻き作業のために極寒の海に出ていきます。
末崎町でのわかめ養殖を含むは水産業者は減少傾向にあり、親御さんが水産業ではないせいか、船に乗ることが初めての子がほとんど。大体いつも半数が船酔いでダウンしてしまい、作業が出来なくなってしまうそうです。
末崎中学生のわかめの種巻き作業には岩手県内の新聞社、ラジオ放送局が取材に駆けつけ賑わい、毎年地元の明るい話題となっています。
今年は、気候が安定せず状況が心配されていましたが、種巻き、間引き、収穫と無事に終わり、立派に育ったわかめが収穫されました。
南浜わかめ養殖組合の支援を受けて、みんなで立派に育てて収穫したわかめ。収穫した後は加工(ボイルと塩蔵)、芯抜きを学び、作業を進めていきます。
街で自分達のわかめの販売を学ぶ2年生
1年生で加工まで行い冷蔵庫に保管していた中学生達の塩蔵わかめ。2年生では、それを自分達で袋詰めを行い販売準備を進めます。
そして袋詰め作業が終わったら「ふれあいわかめ」が出来上がり、街へ売りに行く準備完了します。自分達の写真がプリントされ、学校名も入ったオリジナルわかめです。
2、3年前までは岩手県のアンテナショップ銀河プラザ(東銀座)で販売を行っていましたが、東日本大震災後は盛岡市街などで販売を行っています。
販売と呼び込みに分かれ、生徒達はどんどんわかめを売って行きます。販売開始した直後は少しぎこちない感じですが、次第にだんだんと慣れていき、みんなで協力しててきぱきと接客をこなします。高品質・低価格な生徒達の「ふれあいわかめ」は、いつも数時間後には完売します。
植林体験で山と海のつながりについて学ぶ3年生
1年生ではわかめ養殖発祥の歴史に始まり、種巻き、収穫、加工まで、2年生では袋詰めと販売まで、そして最後の3年生では末崎町の山の植林活動を行います。
末崎町の山の栄養は三陸の海へと流れ込んでいきます。そして山を豊かできれいに保つことが、豊かな海を育むことへつながっていきます。
山での植林活動を通して山と海の関係の大切さを学び、中学校3年間を通してのわかめ養殖総合学習は終了します。
現在まで10年程続いている末崎中学校のわかめ養殖総合学習。わかめ養殖発祥の地での後継者育成のために今後も続いていって欲しいと思います。
しかし、以前からの漁業後継者不足に追い打ちをかけるような東日本大震災による人口流出(岩手県では1万人超)や漁業離れの増加。末崎中学校のわかめ養殖総合学習を支えて来た漁業関係者の減少や生徒数の減少の問題が深刻化しています。
また、加えて総合学習のための資金調達が困難になってきていることや、学習コスト増などの問題もあり、日本で唯一のわかめ養殖総合学習の継続が今後の課題となっています。